ピーター・クラビーツコーチは、比較的短い時間を最大限に活用することがすべてだと説明している。

「監督が話すことができる時間は最大で5分か6分なので、できるだけ早く、短く、正確に話す必要がある」とユルゲン・クロップ監督のアシスタントはLiverpoolfc.comに教えてくれた。

「本当に要点を押さえる必要がある。10分間の映像を作り、『ここを見ろ、そこを見て!』と言うことはできない。伝えたいことを的確に伝えるものでなければならない」

クラビーツコーチは、ハーフタイムにレッズのドレッシングルームで何が起こっているのかを明らかにし、さらに、そのプロセスにおける彼の役割について詳しく説明している。

分析を担当するハリソン・キングストンさんとマーク・レイランドさんのサポートを得て、クラビーツさんは試合最初の45分(正確には41分か42分)を使って、ハーフタイムに選手たちに伝えなければならないポジティブな側面とネガティブな側面両方の戦術的なニュアンスを特定する。

もちろんクロップ監督とアシスタントコーチであるペップ・リンダースコーチも同じことをしているが、クラビーツコーチは、監督がハーフタイムにいつも言っていることを視覚的にサポートするために、最大3つのビデオ映像を大画面に表示し、クロップ監督の指示をサポートするようにしている。

前半の間に収集された情報は、メルウッドで作成・分析された詳細な試合前の戦略をさらに補足する。

クラビーツコーチの言葉によると、「ハーフタイムの分析は、1週間の分析過程全体の最終形態のようなものだ」

試合途中でクロップ監督とコーチ陣が利用できる極めて重要な数分間で、試合展開の詳細な説明をするには、事前に何が起こっているのか説明する必要がある。

クラビーツコーチは科学捜査のように作業を進めている。

「分析は常に週初めに始まり、もちろん、次の試合に向けて何が期待できるのか、どのような相手と対戦するのか、彼らの長所はどこにあるのか、そしてその試合で私たちがしなければならないことは何かを分析する」とマージ―サイドに引っ越してくる前に、マインツとボルシア・ドルトムントの両チームでクロップ監督から信頼される補佐であった48歳が説明し始めた。

「私たちの戦略は常に同じだ。つまり、私たち全員が知っているように、できるだけコンパクトに守ること。そしてボールを奪うこと。これに関してはとりわけ重要視しており、最も力を入れている。ボールを保持することによって自分たちのゴールを守っている。それは常に一貫している。そして、ボールを持っている場合は、試合を支配したい」

「私たちは、ビルドアップの方法、攻撃を組み立てる方法、そしてチャンスを生み出す方法を模索している。そのために、私たちの次の対戦相手に対してどのように守備をするのか、どのようにチャンスを作り出すのか、そして私たちのスキルを使ってどのようにうまく攻撃することができるかの解決策を見つける必要がある」

「これが1週間のプロセスです。もちろん、私たちが生み出したすべてのアイディアは試合やゲームプランに影響する。なので、私たちはすでに試合に向けた解決策に向かって考え、取り組み初めている」

「このプロセスは、試合前に行う分析ミーティングにつながっており、そこで選手たちに分析内容をプレゼンする。そこでは、すべてのアイディアを適切な方法でまとめることがとても重要です。それは分析内容が長すぎないことだけでなく、私たちのアイディアが非常に明確で要点をしっかり押さえ、選手に私たちの狙いを正確に示すことです」

「私たちやチームの哲学にとって、選手が私たちのアイディアを知っていること、彼らが私たちのアイディアに従うこと、全員がどのようにプレーしたいか、どのようにチャンスを作りたいか、彼らがどのように試合を見るかできる限り知っておくことはとても、とても重要だ」

「これは私たちが常にトライし続けていることであり、このすべてが私たちのゲームプラン、試合への準備に繋がっている。そして、もちろん私たちコーチ達は、前半の間に私たちのゲームプランがうまく機能しているか、私たちのアイディアが機能しているのか、選手は私たちが望んでいる解決策を見つけられているのか、彼らは私たちが求めている方法、以前に確認した方法でプレーできているのかを常にチェックしている」

「これらすべての私たちのパフォーマンスと対戦相手のパフォーマンスがハーフタイム分析に繋がっている」

適切なゲームプラン案がクラビーツコーチから提案され、クロップ監督とリンダースコーチの間で迅速な意思決定が行われた後、ハーフタイムにチーム全体に伝わる。

「おそらく私がいつも本を持ち、何かを書き込んでいるのを目にしているだろう」とクラビーツコーチは続けて述べた。

「私がそこでやっていることは、私たちのうまくいっている状況、問題がある状況、解決策が見つからなさそうな状況を正確に知ることだ。私たちのディフェンスに問題があると、おそらく相手がそこを狙ってチャンスを作り出してくると私は気づく」

「次に、私たちは伝えなければいけないことの概要を作成するようにし、ハーフタイムの少し前、だいたい35分くらいに私はベンチでおそらくペップやユルゲンと一緒に、ハーフタイムに話さなければいけないポイントを考える。そこで常に意識していることは、『どうやって選手を助けることができるか?後半に何をする必要があるのか?』ということだ」

「今やっていることを続けるのか、私たちのアイディアが正しいのか理解し、私たちはそれらに従い続けなければいけないのか、それとも、私たちはうまくプレーできているから、『このままやり続けろ』と伝えるべきなのか?」

「または、私たちに問題があるとき、解決策について、または後半に何を変更しなければならないかについて、すぐに考える必要がある。これらすべては考察であり、後半への解決策である。私はユルゲン監督のハーフタイムでの指示を手助け、またはサポートできる写真やクリップを見つけるようにしている」

「あなたが想像できるように、監督が話すことができるのはおそらく5~6分程度で、許される時間はそれくらいだ。すべての試合がこのような状況ではないが、ユルゲン監督のハーフタイムでの指示をサポートするために、選手へ見せるための適切なクリップを見つけることは可能だ」

「ハーフタイム3~4分前に、私はベンチを離れ、ドレッシングルームに向かう。そして、ハリー・キングストンさんとマーク・レイランドさんと会い、前半の間に気づいた正しいクリップを選ぶようにしている。このクリップが適切かどうか、使用できるかどうかをもう一度確認する」

「もちろん、時間的なプレッシャーがあるため、ストレスも感じる。正直なところ、時間があまりないため、正確さが求められる。これらは非常に激しい数分間である。役に立ちそうな1つか2つ、多くても3つのクリップを見つけ、満足していると、同僚であるユルゲン監督とリンダースコーチがやってきて、私はそのクリップを提示して、なぜそのクリップが役に立ちそうかを伝える」

「そのあと、私たちはそれを見せるかどうか一緒に判断する。この意思決定をする際にいつも意識していることは、後半への解決策に関連しているものなのか、選手へ見せるために役立つのかどうかです」

「私たちはYesかNoで決定し、1つか2つ、または多くて3つの選手に見せるクリップを決定した場合、これらの写真を選手に説明しながら示す。これが試合中のプロセスです」

アンフィールドと比較して、リヴァプール側が使うことのできるアウェイスタジアムの設備やスペースが異なっている可能性があるなどの問題点はは、この円滑に仕事を進める必要がある作業に影響するだろうか?

「まあ、ときにそれはおもしろい挑戦だ!」とクラビーツコーチは笑いながらも認めた。

「アンフィールドではすべてが優れている。私たちの新しいドレッシングルームは、誰もが知っているように素晴らしい。必要なもの、スペースがすべてあり、少し楽に仕事ができる」

「しかし、私が言ったように、サッカーの試合に勝つということは問題を解決するということです。なので、私たちの目標は、どこにいても常に同じ基準を保つことです。どこにいても、どのスタジアムでも、どの街でも、どの国にいようが関係ない。どこにいても、毎回同じことができるように努めている」

「小さな更衣室が与えられるアウェイ戦では、もしかしたら少し難しいかもしれないが、最終的に私たちはどこでも実行したいと思っている。それは少し難しいかもしれないが、私たちの行う仕事に影響を与えてはいけない。」

「協力して仕事をする方法、いつでもどこでも同じ仕事ができることは重要だ。もちろんこれは私たちがトライしようとしていることです」

前半がプラン通りに進んだ場合、ハーフタイムの主なテーマは、少なくとも今のところ試合前の戦略がうまく機能しているかの確認の繰り返しなのか。

「それも1つの可能性だ」とクラビーツさんは指摘した。

「他の可能性として、前半で解決策が見つからないときは、選手に私たちがプレーできるスペースや守備の際に相手がどのように私たちを崩そうとしてきているか確認できる写真を提供するようにしている」

「もちろん、それが全く新しい情報であってはいけない。たぶん、少なくとも前半に何がうまくいったか、それとも本当に難しいことを伝える。一番いい方法は、以前に話し合ったことについて話すことです。強化して、繰り返し、もう一度見せて、もう一度説明する」

そして、試合状況に関係なく、クロップ監督の話は必ず、リヴァプールが相手に対して目を向けるのではなく、常に自分たちの改善策が中心に置かれる。

「もちろん、これは私が意味する『解決への方向性』だ。新しい問題を作る必要はない。今ある問題を解決したいのだ」とクラビーツコーチは述べた。

「試合にはいつも問題がある。違うシャツを着た私たちとは異なる11人の男たちがいて、彼らは私たちが行うすべてのことを避けたいと思っている。もちろん、彼らは私たちにとって問題だ」

「それから、私たちのアイディアと解決策そして私たちのプレーについて話し合う。単に私たちがやりたいからという理由でハーフタイム分析をするのではなく、選手がより簡単にプレーできるようにサポートするという理由で分析をしなければいけない。これが非常に重要だ」

前半終了間際の私たちのゴール、相手のゴールどちらもハーフタイムでの選手へ提供する情報に影響しない。

「たまたま起こった可能性のあることについて話すのではなく、体系的に起こったことについて調べている」と語るクラビーツさんは、2019-2020シーズンでハーフタイムが最終的な結果に違いをもたらした例を尋ねられたとき、前半が0-0に終わった試合を引用している。

「1つの例は、ホームでのサウサンプトン戦だ。サウサンプトンは本当に、本当に、本当にいいプレーをした」と彼は振り返った。

「最終的には4-0の勝利に終わったが、この試合は非常に拮抗していて、サウサンプトンは明らかに非常にしっかり準備をしてきていた。前半は私たちに問題があり、彼らがチャンスを作り出し、私たちはうまくプレーできていなかった」

「ハーフタイムの指示は、『続けろ、そのまま前半のように攻撃し続けろ』だった。単純に言えば、『継続すれば、ゴールを奪うことができる』というものだった。もう少しコンパクトな守備をするというのが1つ目の指示で、2つ目は素晴らしいフィニッシュの状況を作り出すために特定のスペースを使うというものだった」

「メッセージは、私たちはプラン通りに機能しているということだったが、十分な力が足りなったので、それを続ける必要があった。そして、51分か52分にアレックス・オックスレイド=チェンバレン選手が私たちがハーフタイムに見せたものと全く同じゴールを決めた」

「ときどき、このようなことが起こる。ハーフタイムで何かを見せ、それがそのあとすぐに起こる。これらはコーチにとって幸せな瞬間だが、あらゆる称賛はこの情報を受け取り、それに集中し、ピッチでその指示を実行するためのスキルと質とテクニックを持ち合わせている選手に集まる」

実に、クラビーツコーチは現在のリヴァプールが、戦術に関する指示を実行することができる並外れた能力を持っていると考えているだろう。

「戦術ボードでは最高のアイディアを作成することができる。それは素晴らしいことかもしれない。しかし、選手がこれらのアイディアに対応できない場合、ピッチでそれに気づくことができない場合、それは役に立たない!」と彼は結論付けた。

「賢い選手であるほど、それはより早く実行される。私たち、特に数名の選手はもう5年ほど一緒に仕事をしてきて、彼らは何が今後起こるか正確に理解している。それは大きな強みだ。彼らは、私たちが解決策を探していること、より細かいことについて話していることについて知っている。このような状況でより正確になればなるほど、うまく機能する」

「このグループの選手たちはとても協力的で、グループとしてとても強力であり、常に向上し続け、私たちが提供する情報を理解しようと努め、ピッチでそれを実行することができる」

「これは私たちが毎日目にしていることで、毎日話していることだ。このクオリティを持つこと、情報を吸収するためにスマートで賢くなること。そして、それを実行すること。もし、これが機能している場合、楽しい時間を過ごせる。なぜなら、これはコーチとして望んでいるプロセスだからだ」

「仕事、分析、情報を与えること、アイディアを作り出すこと、すべての考えは選手をサポートしたり助けたりするためだ」

「もし、それをしっかりと吸収し、実行することができる選手がいるのであれば、それはいいコンビネーションだ」