1年前にリヴァプールが6度目のヨーロッパ・チャンピオンになったときの輝かしい思い出をジョーダン・ヘンダーソン選手が語った。

このミッドフィルダーは、201961日に行われたチャンピオンズリーグ決勝でチームメイトと共にトッテナム・ホットスパーを2-0で下し、優勝トロフィーを掲げたレッズ史上5人目のキャプテンとなった。

今週、優勝から1年を迎えたことを記念して、ヘンダーソン選手はLiverpoolfc.comとのチャットの中であの日の夜の感想を語った。

彼はマドリードでの忘れられない夜に向けた準備期間を回想したほか、決勝戦の試合展開を改めて分析した。もちろん、試合後の歓喜の瞬間も振り返った。

チャットの全文は以下から読むことができます。

2019年のチャンピオンズリーグ決勝から1年が経ちましたが、まずは準決勝を振り返ってみましょう。かなりのエネルギーを注ぎ込んだわけですが、どのようにして決勝進出に向けて集中力を再び高めていったのでしょうか?

明らかに昨シーズンのリーグ戦は僕らにとって良いシーズンだった。97ポイントを獲得できて素晴らしいシーズンだったけど、残念ながら優勝ラインを超えることはできなかった。だから、最終節のあとは本当に残念な気持ちで、その事実を受け止めるのは難しかった。でも、決勝に進出できたことやマドリードでのスパーズ戦ではある種の助けになった。そのときの挫折を糧にして、これ以上同じ挫折を繰り返さないようにすることができたし、この時は勝者の側に立つことができたからね。ありがたいことに、優勝を実現のものにできたよ。

2019年の決勝に向けた準備は、その前年のキエフで決勝戦と比べてどうでしたか?

最終戦から決勝戦までの期間が長かったので、一昨年とは少し違っていた。監督やスタッフのために言うと、監督は準備や3週間という期間については正確に把握していたと思う。試合について言えば、僕たちはフィジカル的にもメンタル的にも良い状態で臨めたと思うよ。それがこの試合にも表れていたと思う。

マドリードでの決勝戦を前年の決勝よりも良いものにするために、個人的にはキエフでの決勝戦から何を得て準備を進めたのでしょうか?

チャンピオンズリーグの決勝を戦ったという経験は、決して侮れないものだと思う。僕たちの多くは、前年の決勝戦に出場し、経験を積んでいた。2度目となった決勝戦ではその経験がとても役に立ったと思う。経験そのもの、試合中のゲームマネジメント、試合前の気持ちの作り方、それにアドレナリンなどがそうだね。1度経験していれば、2回目以降は1回目の経験を活かせると思うし、僕たちはそれができたと感じている。ありがたいことに、僕たちは事をうまく進めることができたし、最後には僕らにとって素晴らしい結果を残すことができた。とても特別な夜になったよ。

キエフでの戦いから12か月が経過して、より良い準備をするために取り入れた最大の要素は何ですか?

改めて思うのは、純粋にあらゆる経験から学んだということだ。最初の頃は、もちろん、試合には勝てるだろうと思っていた。自分たちはまだ良い立場にいると感じていたし、試合のために良い準備をすれば良い気分で試合に臨めると思っていた。そういうこともフットボールにはあるかもしれない。だけどその日の夜、自分が得るに値する結果が常に得られるとは限らない。試合中や、試合後の反省を通して学ぶこともある。ピッチ上でもピッチ外でも、そのような経験から学んだことが次の試合に向けての糧になったと思う。そのような学びが、マドリードでの決勝戦に向けての助けになったよ。

マドリードでの決勝戦へのモチベーションの1つにプレミアリーグでの優勝逃したことを挙げていましたが、キエフでの出来事もモチベーションにしていたのでしょうか?

それも大きな要因の1つだね。そのキエフでの決勝戦だけではなく、これまで何年にもわたって僕らそれぞれが経験してきた数々の決勝戦も含まれる。ヨーロッパリーグの決勝戦や、負けてしまったリーグカップの決勝戦もそうだ。それらすべてから学ぶことができて、これらのおかげで、成功を収めたい、より良くなりたいという気持ちがさらに大きくなるんだ。逆境に直面するたびに、僕たちはうまく立ち直ってきた。それを続けてさえいれば、きっと何かを勝ち取る瞬間が来ることはわかっていた。そしてありがたいことに、それを実現できたんだ。

3週間にわたる準備期間を経て、いよいよエスタディオ・メトロポリターノでチームを率いることになりましたが、そのときはどのように感じましたか? 

興奮が収らなかったし、アドレナリンが体中に溢れていたよ。3週間の準備期間中、ファイナルのことを考えない日はなかった。目が覚めて最初に考えるのはおそらく決勝戦のことで、長い眠りに入る前、最後に考えるのもこの決勝戦のことだった。アドレナリンや興奮というのは、できる限りコントロールして、ゲーム中にうまく活かすことが大切なんだ。そうすることができたように思うし、大きな試合や数々の決勝戦でのプレー経験が役に立っていると思うよ。

このような大舞台では、緊張をどのように抑えつつ、ピッチ上でポジティブなエネルギーに変えていくのですか?

試合中、あるいはウォーミングアップになるとかなり気持ちが楽になるよ。スタジアムに到着して、ウォーミングアップをして、試合が始まって実際にプレーすると、緊張もほぐれるよ。試合中における自分の仕事や、試合そのものに集中することはとても簡単だ。それまでの数週間が一番大変なんだ。試合に向けた準備のことしか考えられないということが一番タフなことだと思うよ。準備期間だった3週間は試合をすることができず、ただひたすらにその日を待つだけだった。それでも最終的には素晴らしい結果をつかむことができて、ミッションを成功させることができたんだ。

試合のほうは好調なスタートとなりました。開始数分でPKを獲得したときはどう思いましたか?

嬉しかったよ!ペナルティをもらって先制点を奪うのは、どんな試合でも大事なことだ。両チームの考え方も少し変わるかもしれない。それでも最終的に思い返してみると、早い時間帯に得点を決めたときと、試合を振り返っていたときにはそれぞれこう思ったよ。試合中や試合後すぐに改善点を振り返っているときには、僕たちが試合前にあったようなレベルではなかったと思うだろうし、良いパフォーマンスではなかったとも思うだろう。でも、実際に試合を分析して振り返ってみると、僕たちは状況に応じてうまく対処できたと感じるんだ。とても完成されたパフォーマンスだったし、ディフェンスも良かった。決勝戦で勝つのに必要なことはすべて発揮できたし、試合を振り返ってみてもポジティブなことがたくさんあったよ。

スコアが1-0のまま均衡状態が続きましたが、試合中には自分たちが勝てるだろうと感じていたのでしょうか? それとも、リードはわずか1点だったために、少し不安だった部分もあったのでしょうか?

そうだね、1-0は危険なスコアだ。ひとつでもミスを犯したり、スパーズの選手に得点機が訪れたりすればすぐに同点になってしまうからね。1-0は常に危険な点差だけど、最高の形で守備をコントロールできたと思う。僕たちレッズは積極的に前に出て、多くのチャンスを作り、多くのゴールを決めることで知られているけど、あの夜、守備における全員のパフォーマンスは本当に良かったと思う。試合のほとんどの時間で守備にまわっていたけど、個人的には試合をコントロールできていると感じていたね。ディフェンスはとてもうまくいっていた。相手も僕たちのディフェンスを崩すのに苦労したと思う。前に出て、あと12回チャンスを作ることができていれば、追加点を奪えていたと思う。

後半にディヴォック・オリギ選手がゴールを決めて追加点を奪いましたね。ついに2点目が入ったときの気持ちはどうでしたか?

あれは本当に大きなゴールだったし、試合の中でも大きな意味を持つ瞬間だった。もちろん、そのおかげで少しばかり一息つけるようになったし、スパーズの勢いも少しはなくなったことだろう。試合におけるもうひとつの重要な瞬間だね。しかし、それでもスコアがまだ2-0の場合は、全力を出して、できる限り守りきり、最後のホイッスルが鳴るまでボールを長く保持しようとしていた。

試合終了の笛が鳴ったときの気持ちを教えてください。 

喜び、安堵、幸せ…。思いつくかぎりの気持ちが込み上げてきたよ。最後のホイッスルを聞いた瞬間は本当に特別なものだった。過去何年にもわたってチームで続けてきたハードワークや全てのことに意味があった。実際にそれをやり続けてきたから、今までで最高のトロフィーを獲得することができた。それは私が夢見ていた以上に素晴らしい瞬間だった。

その気持ちをこれまで経験してきた他の気持ちと比べることはできますか?それともこれまでの人生で経験してきた気持ちとは別の種類のものでしょうか?

そうだね、その感情は他の何かと比較することはできない。今では説明するのが難しいくらいだ。私がこれまでに経験した中で最高の気持ちだ。言うまでもなく、人々は「まぁ、子どもができたときは」などと言うだろう。これももちろん、世界で最も特別な感覚だけど、それとはまた違っているんだ。競争やスポーツに関連することはどれも、子どもができたときとはまた別の感情だよ。これはとても特別で、忘れられない素晴らしい感情だ。

どんなふうにトロフィーを掲げるかはあらかじめ考えていたのですか?

ああ、考えていたよ。正直、前もって考えていたんじゃないんだ!ドレッシングルームで冗談を言い合っていて、ロボがふざけて、毎回あの足踏みをしながらトロフィーを掲げる振りをしていたんだ。そしていざトロフィーを掲げるとなったとき、みんなと一緒に楽しみたいなって思って、あのロボのおふざけを使うことにしたんだ。私はトロフィーを持ち上げる前に、ただ選手たちの顔を見たかった。実際に掲げる前にチームメイトの顔を見ておきたいと思ったんだ。僕にとって本当に特別なことだったよ。選手に背を向けるのではなく、仲間の顔を見られてね。そう、だから即興でやったんだ。チャンピオンズリーグで披露した後、他の大会でもやり続けようってみんなが言ってきたんだ。スーパーカップやクラブW杯でもね。

今では象徴的なトロフィーリフトですよね。

多くのひと、特に子どもたちがそれを楽しんでくれたよ。子どもたちがあの足踏みを真似してくれている動画もたくさんあった。だから本当に素晴らしかった。チャンピオンズリーグのトロフィーを掲げるために何かを準備するでもなくただ壇上でトロフィーを掲げたいよね。僕もそう思ったんだ。でも、さっき言ったように、ロボは以前からその動きをふざけてやっていたし、私はトロフィーを掲げる前に選手の顔を見たかったから、真似して良かったと思う。本当に特別な瞬間だった。

試合後にピッチ上でセレブレーションをしている際、印象に残っている瞬間はありますか?

そうだね、個人的に目立っていたのは、サイドスタンドにいる父を見たときだね。かなりの時間ピッチにいて、交代したくなかったんだ!でも個人的には、ピッチ上で祝いあっているときに父と一緒にあの瞬間を過ごせたのが嬉しかった。これもまた、この日の夜の出来事の中でも特に印象に残っている瞬間だね。

試合前のモチベーション、そして今回は絶対に勝とうという気持ちが、あの瞬間に一気に湧き出てきたのではないでしょうか?

そうだね。フットボールは私にとっても、家族にとっても大きな意味を持つものだ。それにたくさんのことを経験してきた。数々の決勝戦などフットボールにおいてだけではなく、人生においても、父が経験してきたことにおいてもだね。父の人生や、父とってどれほどの意味を持つのかにおいても意味のあることだ。私はフットボールが父にとってどれほどの意味を持つのかを知っているし、父もそれが私にとってどれほどの意味があるかを知っている。振り返ってみると、あの瞬間までの道のりすべては運命だったのかもしれない。とても特別な瞬間でした。

フットボール界で最も大きな栄光のひとつをマドリードで掲げるときに、その場にお父さんがいたのは特別なことでしたか?

とても特別だったよ。父だけでなく、母や妻、家族がその場にいてくれることには大きな意味がある。でも、特に父は、それに至るまでの数年間、長い時間をかけてその場にいることができたということを考えると、トロフィーを獲得できたこと、そして一緒にここまで歩んでこれたことは本当に意味のあることだね。トロフィーを獲得した後すぐに、父と一緒にその瞬間を過ごすことができたのは、本当に特別な瞬間だったよ。

今ではKopスタンドにヘンダーソン選手によるトロフィーリフトの際の写真が描かれたバナーが掲げられていますが、試合前にそれを目にするときにはどのような気持ちになりますか?

ああ、特別な気持ちだよ。正直なところ、クラブの歴史の一部になること、そしてKopスタンドに掲げられたバナーを見るのに、これからも慣れることはないよ!このフットボール・クラブとチームのためにできること全てに取り組んで、それらを成功させるために、さらにモチベーションを高めたいと思っている。でも、ファンの皆さんには、クラブとして、チームとして、感謝してもしきれないくらい感謝しているよ。これこそ、このフットボール・クラブを本当に特別なものにしているんだ。

ヘンダーソン選手が所属しているクラブ、そしてチームをどのように表現しますか?リヴァプールFCにいる時間はとても特別なものだと思いますが。

間違いないね。先ほども言ったけど、他の誰とも一緒にプレーするとは夢にも思っていなかったよ。このチームには素晴らしい選手がたくさんいるけど、彼らは人としても、ドレッシングルームでの振る舞いも、選手だけでなくスタッフも同じように、皆の仲が良いんだ。ファンについても、もちろん信じられないほど素晴らしいサッカークラブだ。ここ数年は良いサッカーをしてきたし、厳しい時期もあったけど、同じように素晴らしい時期もあった。今はこのチームとこのフットボール・クラブの未来がどのようなものになるのか楽しみで仕方がないよ。僕らがこれからも全力を出し続けて、向上し続け、学び続けることができれば、間違いなく将来的にもっと成功を収めることができるだろうね。

それでは最後に、マドリードでの特別な夜を思い出すのに、決勝戦の思い出の品は家の中に飾っていますか?

あの日の思い出の品はたくさんあるよ。ユニフォームにシューズ、本当になんでもあるね。トレーニングウェアやトレーニングシューズでさえも全部残していて、安全な場所に保管しているんだ。キエフでの決勝で負けてから、マドリッドでの決勝までの道のり、そして優勝までの道のりをみんなで本にしたんだ。思い出に残すために本を作ったんだ。たまにそのときの写真を振り返るんだ。何度見ても良いものだね。