南野拓実選手にとって、今季はリヴァプールで初めてフルで過ごすシーズンになることを忘れてはならない。

アンフィールドで過ごしてきたこれまでの2年間は、つい先日レッズでの50試合出場を達成した日本代表にとって波乱に満ちたものだった。

彼は今や、マージーサイドにすっかり馴染んでいる。Liverpoolfc.comでの今回のインタビューは、南野選手にとって初めて英語で行われたインタビューとなった。

「僕は今この瞬間を楽しんでいますし、チームの助けになれていると感じています」と、背番号18を背負う選手はリラックスした表情で話す。「残りのシーズンも全力を尽くすつもりです」

南野選手が2020年の年明けに加入してから、数多くの出来事が起きてきた。

南野選手が契約書にサインした時点では、ユルゲン・クロップ監督のチームはまさしく勝利の方程式が完成されていたような状態だった。他の多くの選手と同じように、南野選手にはチームに適応するための時間が必要だった。

しかし、新型コロナウイルスの世界的な流行によりフットボールができなくなり、南野選手は英語をほとんど話せないなか、新天地での生活を余儀なくされた。

そしてリヴァプールとの契約から1年が経ち、サウサンプトンへの期限付き移籍は環境に慣れるための一助になった。そして2021-22シーズンの現在、南野選手は7ゴールを挙げており、カラバオカップ決勝に進出したリヴァプールの主力の1人として、今大会でここまで4得点を記録している。

今季の記者会見でクロップ監督は「タキ(南野選手)は今、いい状態にある」と何度も口にしている。

その南野選手自身は、与えられたチャンスのひとつひとつを最大限に生かそうしてきただけだ。

AXAトレーニングセンターで行われたインタビューで、南野選手は次のように話してくれた。「特に今の僕の状況のように、すべての選手が常に90分プレーできるわけではないので、サッカー選手としてのこの仕事は難しいと感じるときもあります」

「僕はリヴァプールのためにプレーしたいと思っています。ただ、僕自身、リヴァプールで50試合に出場してきたという事実はいいことだと捉えています。とても嬉しく思っています」

「今よりも求めていきたいものはありますし、もっとチームを助けられるようにしたいです。簡単なことではありませんが、そのためには何でもしていきたいと思っています」

「どの選手もとても親切にしてくれています。ここにやってきた当初、僕はまったく英語を話せませんでした。何も話せませんでした。だけど多少のドイツ語は話せたので、ドイツ語を話せるジョエル(・マティプ)やサディオ(・マネ)、ナビ(・ケイタ)や(ジェルダン・)シャチリに質問をして、ドイツ語で教えてもらっていました。特に1年目のときはとても助かりました」

南野選手は今、リヴァプールでのキャリアですでに乗り越えた数々のハードルを振り返る段階にあるようだ。

特にパンデミックについては、次のように振り返っている。「怖くて、初めての経験でしたし、大変な時期でした」

「トレーニングが再開されたとき、クラブでのあらゆることがしっかりオーガナイズされていました。クラブは何から何まで完璧に準備してくれましたし、そのおかげで僕はフットボールやチームに簡単に戻っていくことができました」

「とても難しい時期でしたが、今ではもう問題ないですね」

リヴァプール初の日本人選手にとって居心地のいい場所から離れることは、もはや慣れっこだ。

まだ10代の頃、南野選手はサッカー選手としての夢を追い求めて、故郷の大阪を離れるという勇気ある一歩を踏み出した。

オーストリアに渡り、ザルツブルクでプレーした南野選手は、成功に満ちた5シーズンを過ごし、チャンピオンズリーグの舞台でまばゆい輝きを放つ機会も得た。

リヴァプールがこの万能のフォワードを獲得する数か月前には、誰しもを熱狂の渦に巻き込んだ4-3の熱戦をザルツブルクと繰り広げており、アンフィールドは南野選手の才能を目の当たりにしている。

「小さい頃にはすでに、自分の夢はヨーロッパ、特にプレミアリーグでプレーすることだと思っていました」と、27歳の日本人は振り返る。「それが僕の夢でした」

「できるだけ早くヨーロッパでプレーしたいと思っていました。特に日本人選手にとって、ヨーロッパでプレーすることは大きなチャレンジです」

「小さい頃は、フェルナンド・トーレスやダビド・ビジャのプレーをよく観ていました。この2人は僕のアイドルでしたし、2人のような選手になりたいと思っていました」

「ただ、夢を叶えたいときにはリスクをとるか何か大きなチャレンジをしなければなりません。僕はリスクを冒したり、チャレンジに挑んだりすることは好きです」

リヴァプールでは数か月でそのリスクが報われ、南野選手は2019-20シーズンのプレミアリーグ優勝メダルを手にした。

彼は今、レッズのキャリアで2つ目となるタイトルを目指している。そして、今週末の現地時間日曜日にウェンブリーで行われるカラバオカップの決勝では、そのチャンスを現実のものにするべく、チームメイトとともにチェルシーと対戦する。

南野選手は今シーズン、今大会5試合すべてに出場しているが、この特別な思いのこもったトロフィーを掲げることは、これまでに果たしてきた役割を考えると、他のコンペティションとは違った感慨深いものになるだろうと考えている。

「これは僕を含めたチームにとって本当に大きな、大きなものになります」と力を込めて話す。「僕はこのタイトルを獲得したいですし、チームとしても獲得したいです」

「カラバオカップでは多くの出場機会を得てきたので、当たり前ですが優勝したいと思っています。決勝でも出場して、全力を出したいと思っています」

「いつもとは少し違う気持ちですね。カラバオカップ初戦のノリッジ戦と、その次のプレストン戦でのスタメンはリーグ戦とは大きく違うメンバーでした。それもあって気持ちとしては違った感じでした」

「ただ僕にとってはどの試合も大事な試合です。僕にとっては大事な、大事な一戦ですし、決勝に進出できて嬉しく思っています。カラバオカップで優勝したいですね」

今はチームでのタイトル獲得を目標にしている南野選手だが、かつてはギネス世界記録の保持者でもあった。

大阪府泉佐野市出身のこの若者は、1分間に187回のハイタッチをした人物としてギネスに認定された。

しかし、彼が再びその座に返り咲くことはないだろう。

南野選手は笑いながらも、次のように締めくくった。「もう記録保持者は僕ではないと思います。でも、おもしろかったですよ。日本にいた18か19歳の頃の話ですが、どこか不思議な感じです」

「いい思い出ですが、もうしたくないですね。手が疲れてしまうので2回目は遠慮しておきたいです」

「そこまで積極的な人間ではないので。1日オフがあったら家にいてゆっくりして、Netflixを観ています。これが僕のスタイルなんです」