ユルゲン・クロップ監督はリヴァプールのサポーターに向けて、選手とスタッフが個別あるいは複数名でのトレーニングをこなしつつ、人との距離をとるようにという政府の新しいガイドラインにどのように順応しているかを伝えた。

監督は自宅からビデオカメラを通してLiverpoolfc.comの独占インタビューに応じ、2週間前のコロナウイルス感染拡大に伴うフットボールの中断について、最初に手紙でサポーターに伝えた感情を強調した。

クロップ監督は、現在レッズの選手たちが、クラブのフィットネスチームおよびスポーツ科学チームがオンラインで提供しているメニューに基づき、次の試合に向けたトレーニングを個別で行っていることを明かしたが、彼が最も強調したことは全員の健康を第一に考えているということだった。

監督とのビデオ通話の様子はこちらの動画を、翻訳した内容は下記トランスクリプトをご覧ください。

ユルゲン監督、少し前にお話しして以来ですがお元気ですか?

私は元気だよ。今は私たち全員にとって難しい時期だが、個人的には興味深い状況でもある。なぜなら私は今までこのような状況を経験したことがなく、これほど長く家にとどまったことがなかったからね。私自身は全く問題ないが、周りの人たちの状況がとても気がかりだ。

先ほど言ったように、インタビューするのは久しぶりになりますが、最後にメルウッドにいた日のことを思いだしてもらって、選手たちがトレーニング場を離れる前のあの日に何が起こったのかについて少し教えてください。

2週間前のことだったが、アトレティコとの試合はもっと前のことのように感じる。木曜日はオフだった。コロナウイルスによる世界の状況を私たちはすでに知っていたことを覚えている。だが、私たちはまだトンネルの中にいて、コロナウイルスの本当の脅威はまだイングランドにいる私たちのもとへ届いていなかった。土曜日にボーンマスとの試合があり、私たちは勝利した。そして、日曜日にシティが負けたことで、あと2勝すれば優勝できるという情報を得ていた。しかし、月曜日の朝に目を覚ますと、マドリードは水曜日から学校と大学を閉鎖すると聞いた。正直、その試合に向けて準備するにあたって、いつもとは違うと感じた。私は普段、周囲のことで苦労することはない。試合に向けて準備をするときは左右にバリアを張ることができる。しかし、あの時は本当に難しく感じた。水曜日に試合があり、本当に良い試合だった。選手たちが示したパフォーマンスが素晴らしかった。結果以上に本当に素晴らしいパフォーマンスだった。私たちは十分に得点できず、多くの失点を許してしまったことは明らかだったが、そうした状況のなかで、素晴らしい試合だった。木曜日はオフで、金曜日にトレーニング場に到着した時にはすでにトレーニングができないことは明らかだった。トレーニングは少し実施したが、ミーティングがメインだった。話さなければいけないことや考慮しなければならないことがたくさんあり、これまでの私の人生で経験したことがないものばかりだった。誰もはっきりとしたことがわからない。誰もこの状況がどのように続いていくかわからない。だから、私たちにできた唯一の方法は、選手たちのためにできる限り状況を整理し、与えられた小さな環境の中でもできる限りすべてのことに対応することだった。わずかな範囲とはいえ、私たちにも責任があるからだ。これが、私たちが短い時間で対処したことだ。そのあと、選手を帰宅させ、スタッフも自らの家に帰り、今に至っているよ。

キャリアを通じて、あなたはチームや選手たちと多くの話をしてきたと思いますが、今回の状況ではどれほど難しかったですか?

そうだね。正直に言って、普段なら自分が話すことについてもっと理解した上で話をしているよ。でも、コロナウイルスの状況についてどうやって私が説明できるだろうか?全く分からないよ。私の仕事や人生において、たくさんの問題に直面してきた。私たちが今直面している問題は完全に異なる種類の問題だよ。問題であることは変わらないとは言ってもね。そして、私は完全に解決志向の人間だ。そして、普段は問題そのものにあまり興味を持たない。情報として受け取り、解決策にすぐに取りかかるからね。このような状態では、何もできない。私にとっても、他の誰にとっても、どうしようもできないことだ。この短い期間では何もできないんだ。私たちは、この事態がいつか収束するだろうとわかっているが、すぐではないだろう。一体何についてならわかっているのだろうか?私にも選手たちと同じくらい尋ねたいことがあり、その答えはわからなかった。何度か、みんなで話をしたよ。大勢でのグループチャットを作って、メルウッドの全員が入っているんだ。選手たちはその時も元気そうだったし、みんな、誰が何をしているのか気になっていて、その話になったよ。オックスのインスタグラムの投稿のことだとか、いろいろね!だから、みんなで話せて良かったよ。雰囲気も良かった。すでに話したように、これはすべての人たちにとって難しい状況だ。世の中にはもっと深刻な問題を抱えている人がたくさんいる。だから、自分の状況について話そうとすると本当に恥ずかしい思いになるんだけれど、私も今、世界中のすべての人が抱えている問題に同じく直面している。こうした状況下で、学んだ教訓だよ。4、5週間前、多くの国が「それは私たちの問題で、私たちの問題で、私たちの問題で、私たちこそが問題を抱えている」と考えていたように思える。今、自然界は、私たちがすべて同じであり、私たちはみな同じ時に同じ問題を抱えることを見せつけている。そして、私たちは問題解決に向けて一緒に取り組んでいく必要がある。この状況から私たちが何かを学べること以外にいいことはないよ。

緊急対応の終われた金曜日の午後、あなたは、フットボールよりも健康が重要だというメッセージをサポーターに送りました。その日様々な感情を経験されたと思いますが、あれが正しいメッセージだと判断されましたよね。

良識として、あれが送信できる唯一のメッセージだった。とはいえ、私がフットボールチームの監督であるということは十分に理解している。それは私がずっと望んできた仕事であり、外部の人たちは私たちにリーダー性や賢明さなどを期待していて、大きな仕事だと思っている。しかし、この状況で、LFCの監督として話したことはより意味を持つが、本当にひとりの普通の人間としてでもあるんだ。なぜなら、私の人生の中でフットボールは私の1番の関心ごとだったが、今回はそうではなった。私は、人々がこの事態について理解し、そして、同じ視点で捉えられるようにしたかった。この状況は、私たちは人として行動する機会にもなっている。例えば、10年、20年、30年あるいは40年後に現在の状況を振り返った時に、あの時は、世界中がこれまでにないほどの団結力とこれまでにないほどの愛情や友情などを示した時だったね、と言えるといいね。そうなったら本当にいいよね。こうした状況を乗り越えている最中には、そういった見方をすることは難しい。病に苦しんでいる人たちは特に。けれども、そう思える日は将来くるはず。将来振り返った時に、このように捉えられるといいよね。なぜならそれが解決策だからだ。私たちはみな自制心を働かせないといけない。みんなで協力しないといけない。互いを気遣いあっていかないといけない。それこそがこの状況の打開策だよ。だからみんな家にとどまっているんだ。全員ではないけれども。医療機関やスーパーマーケットでは、まだまだ多くの人々が働いてくれている。素晴らしいよ。こうした人たちが働き続けてくれているから、私たちは家にとどまっていられる。こうした自分の考えを説明するために、良識的なことについて話したかったんだ。

こうした状況下でも自宅にとどまることもできず働き続けてくれている人々への感謝の気持ちはどのようなものですか?

私の英語は説明するのに十分ではないけれど。彼らの努力は並々ならぬものだ。すばらしい。昨日、病院にいる方達からの動画を受け取ったんだ。高度な治療を行うエリアのすぐ外にいる人たちが、You’ll Never Walk Aloneを歌い始めたとき、すぐに涙が溢れてきたよ。信じられないね。彼らは業務に徹するだけでなく、素晴らしいスピリットも持ち合わせている。他の人々を救うことに熟練していて、私たちも見習わないといけない。これ以上ないくらいに、彼らには感謝しているよ。

私たちクラブに関して言えば、LFCファウンデーションとRed Neighboursはコミュニティーをサポートするためにできるすべてを引き続き行っています。これはクラブにとってとても特別なことです。

この状況下で、たくさんの素晴らしい支援が行われていて、素敵なクラブなんだということは誰もが理解してくれていると思う。こうした組織には素晴らしい人たちがいて、様々なことを成し遂げてくれている。だから、多くの場面で感謝が述べられていることについても、私は驚いていないし、そうした支援の輪を私はとても気に入っている。ファウンデーションであろうと、フードバンクであろうと、私たちクラブの様々な機関が何年にもわたって行ってきたことは素晴らしいことだ。他のフットボールクラブも同様の活動を行っており、責任感を示していることを理解している。とても良いことだ。私自身もそうした活動が素晴らしいと感じているし、まさに私たち全員が取り組むべきことだ。このような状況において、1番にしなければいけないことは寛大であることだ。発する言葉で、感情で、そしてもちろん経済的にも寛大さを示すことだ。それこそ、私たちがやっていることだ。わかりやすいだろう。私たちに手助けできるならなんであれ、100%助けにいく、またそのように努めるんだ。

裏方のチームが行うすべての仕事は、クラブチームにとって極めて重要であると、あなたは常々言ってきました。彼らがこの状況に対応していることについてどれほどの感銘を受けましたか?

最初にまず言わせてもらいたいのは、私は裏方のスタッフだけでなく、みんなが恋しいということ。2週間経ったがこれは休暇ではない。普段なら、どこかで仕事をしていて、裏方のスタッフや同僚との仕事がなくて寂しく思う状況には置かれない。しかし今は、実際どうしようもない状況だ。私たちはお互い会えないことを残念に思っており、一緒に仕事をすることを待ちわびている。私たちはWhatsAppのグループ、電話、FaceTimeなどでたくさん連絡を取っている。だから、お互い頻繫に顔を見ることができるが、私たちが望んでいるものとはまだ違っていて、以前のような状態ではない。しかしながら、彼らは素晴らしい仕事を続けてくれている。私たちは全員が同じ問題を抱えているが、それに加えていくつかの特殊な問題もあるんだ。私たちには選手がいて、選手たちも、私と同じように、通常どおり買い物に行くのが難しい状況にある。私たちはそれぞれ人と距離を置かないといけなくて、その指示に従っている。もう2週間も家で過ごしているんだ。私たちはこうした状況に対処していかないといけない。モナ・ネマーは今、素晴らしい働きをしてくれている。本当に高い水準でこなしてくれている。その素晴らしい仕事ぶりを言い表すのにふさわしい言葉を見つけられない。アンドレアス・コーンマイヤーがフィットネスチームと一緒になって、普段とは違うメニューを用意してくれて、それはアイデアに満ちているよ。もちろん、みんなで同じタイミングに同じものをこなすこともある。現代の技術のおかげで、こういったことはすべて可能になっている。一方で、選手たちは各自のメニューを組んだり、それを録画したビデオを送ったり、課題を設定したりしている。しかしながら、メディカルチームは難しい状況にある。アンディー・マッセイがFIFAに出向し、ジム・モクソンがサラ・リンゼイとともにどこからともなく加わってくれた。彼らは情報収集の面で素晴らしい仕事をしてくれている。想像してみてほしい。孤独になった状態で外部から喉の痛みだとか軽い頭痛などがコロナウイルス感染の兆候であると連絡が入ったときのことを。この情報を知ったあとで、翌朝起きあがれずに喉の痛みと軽い頭痛があったなどと誰が言えるだろうか。それが人間というものだし、これまでもそうだった。そういうとき人は医者を呼ぶ。こういう状況のときは医者を呼ぶことに慣れている。落ち着く必要がある。心理学者のリー・リチャードソン氏はもちろんのこと、あらゆる理学療法士の方々は選手たちと同じ空間で何かをすることができない状態なので、いつもほど忙しくはないことを願っている。レイ・ホーガンがルイーズ・ドブソンと協力して身の回りのことをオーガナイズしてくれている。本当に素晴らしいことだ。我々は直接会うことや、一緒にトレーニングをすることはできずとも、普段と同じようなことをこなしている。もちろん、一緒にトレーニングをすることを望んでいるが、今は現状を100%尊重し、我々自身に与えられた役割を果たしたい。

WhatsAppグループと選手のSNSの投稿についての話がありましたが、選手たちの投稿をみてどう思いましたか?オックスが踊っていたり、ミリーが芝を刈っていたりと面白かったと思うのですが。

私は芝刈りはしなかったけど、オックスのダンスは真似してみたよ!みんなが思うほど悪くはなかったんじゃないかな。この状況を真剣にとらえることが今は重要だが、我々も人間だ。家にこもっていると、他の人たちを助けることができなくなる。我々は医療従事者ではない。スーパーマーケットの従業員でもない。自分自身を明るく保ち、また他の人も気分良くさせることが必要だ。選手たちがインスタグラムで何かをしてくれたときには、それが法の範囲内でなら、私は非常に嬉しく思う。そのような企画はとても良いことだ。どれも面白く、良いことだ。

どのようなものを観て過ごしていますか?

何本か映画を観た。Takenシリーズをもう一度観たよ!正直なところ、普段しないようなことをたくさんしている。そんな期間だ。2週間はたしかに長いが、それほど長すぎるわけではない。

では最後に、多くの人々がフットボールを待ち望んでいるはずです。しかし現状最も大切なことは各自が政府のガイドラインに従って家にいることですが、いかがでしょうか?

これまでも何度も言ってきたから、みんなわかっているとは思うんだけれど、フットボールは世界で最も重要なものではないよ。100%違うよ。この状況では明らかだ。だけれど、フットボールをできるだけ早く取り戻すには、それが人々の望んでいることならばの話だけれど、私たちが自制心を保てば保つほど早くいつもの状態に戻ると思うよ。少しずつにはなるだろうけれど、私たちの日常が戻ってくるだろう。そういうことなんだ。この状況では他に解決策はないよ。誰にも他に何もわからないんだ。各自が自分を律して、他人との距離をとらなければならない。多くはないが、我々も取り組んでいることはある。だが様々なことに対して冷静にならねばならない。そう、経済は回さなければならないし、じきに経済活動も再開されるだろう。だが我々が外に出る回数が少なくなれば、感染者数も減るだろうということは理解している。その方が良い。この先数週間、外に人っ子ひとりいなければ、感染者数のグラフも曲線から平坦なものに落ち着くだろう。それが最も重要なことだ。病院に勤める方々、そして医者のみなさんが深刻な状態にある患者の方に最善の治療を行えるようにしなければならない。人工呼吸器を製造する時間を稼がなくてはならない。治療法を見つけるまでの時間についてもそうだ。賢い人々がウイルスに効くワクチンを作るための時間だ。それまでは、そのような人々のために我々ができる最善のことをしなくてはいけない。今や死ぬ可能性があるのは高齢者や基礎疾患のある方だけでなく、若者にとってもその可能性が増えつつあるということもみんな耳にしているだろう。思いやりや情を示していこう。そして、正しいことをするんだ。必要な限り家にとどまり続けよう。そしていつかはまたフットボールができる時が来るよ。100%ね。私もこれ以上にないほど願っている。実際、待ちきれないんだ。だけれど、耐えなきゃいけない時であって、そうできるように努めているよ。